短編集『固茹玉子』
チリリン……

ドアに施したベルが帰宅したばかりの俺の耳をつんざく。

玄関に溢れている脱ぎ捨てられた靴が、まるで俺の侵入を拒むかのように立ち塞がる。

くたびれた革靴を脱ぐために身体を支える手掛かりを探すが、下駄箱の丁度良い場所には全て、下らないマスコットや靴磨きブラシ、鍵を入れるかごや鮭を咥えた熊等が陣取っていて、悉く俺との接触を遠避けている。


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