びいだま
いつもの病室の前には、少し緊張顔のマアコのお母さんが立っていた。
私達は軽く会釈をして病室のドアノブに手をかける。
今日は、特別な日だから。
マアコにとっても。
「手術の前にあなた方に会いたい、って言ってました。喜ぶと思います」
後ろからマアコのお母さんに声をかけられ、私達は振り返った。
「絶対、大丈夫ですよ」
コマキが言った言葉に、お母さんが声もなくうなずいた。
・・・今日、マアコの受ける手術は、そんなに難しいものではない、ってマアコからは聞いてて安心はしてたんだけど・・・・これが終わったらやっと私も「卒業」できるんだ、ってマアコは笑ってたから、皆無邪気に喜んでたんだけど・・・
「あの・・・・」
お母さんが、私の顔を見て何かを言いかけた時に、ドアが開いて先生と看護士さんたちが出てきた。
その開いたドアの隙間から「果歩?コマキ??」
とマアコの弾んだ声が聞こえた。
いったん、部屋の中に移した視線を、もう一度お母さんに振り返って戻すと、お母さんは「いえ、なんでも、ないので、マアコに会ってやってください・・・」と手で部屋を指した。
「入ろ?」
「う、うん・・・」
お母さんの言いかけた言葉が気になるけど・・・