真夜中の向日葵
立ち上がっていいかげん暗くなった部屋の電気をつける。


あーあぁ…今日の夕飯どうしよっかなー…


頭をポリポリ掻きながら冷蔵庫を開けた頃に

もう一度携帯が鳴った。


何とはなしに設定したオルゴール版の楽曲が流れる。



 あなたが 気付かせた恋が

 あなたなしで 育ってゆく



そういえば機種変更したときから着信音とかなんにも変えてないなぁ、と思いつつメールを開いた。


 そんな遠慮することな
 いじゃん
 来ればいいのにー
 でも来ないんならそう
 伝えとく


ここで冬夜は強引に誘ったりはしない。

渚の本意を理解して汲み取ってくれる。


 ごめん 伝えといて
 今度会う時にはいろい
 ろ話聞かせて
 じゃ よろしくー



画面に 送信しました という文字が出て一息つく。


雨戸を閉めようかと窓を開けて、やめた。


もう暗くなっているのに外は割と暖かく、さわやかな風は夏が日に日に近づいてきていることを感じさせた。


ベランダに置いてあるポトスも最近ぐんぐんと伸びてきている。


その鉢からごくごく小さな雑草らしきものの芽が二つ三つ飛び出していた。


オルゴールの電子音がふと耳に浮かんだ。



 かなしい花 つけるまえに

 小さな芽を 摘んでほしい



ベランダの柵に寄りかかった渚の鼻孔をカレーの匂いが通り抜けていく。


あぁ カレー最近作ってないなぁ、と思った。


それにしても隣は昨日も一昨日もカレーだったような気がする。


どんだけ作ってんだよ、カレー。



まだ出たばかりの小さな芽を横目で見ながら、窓を閉めて渚は明るい部屋の中に戻っていった。

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