3人の き も ち
「佐藤…さん?」
手紙の送り主の名を言えば、座っていた女の子が小さく頷く。
間違って無い。
…ホッとして、目の前の本棚をじっと見る。
悪いという気持ちは、ちゃんとある。
誠意を持って答えている。
つもりだ。
…弥生に言わせると、まるで業務連絡の様らしいが。
「手紙、ありがとう。」
とりあえず、の礼を言えば、“佐藤さん”は真っ赤な顔を隠す様に俯く。
「…気持ちは、嬉しい、よ。」
「いっ、いい…え…あの…あ…。」
棒読みの映樹に対し、緊張してか、モゴモゴと話す彼女の表情から、次第に赤みと嬉しそうな感情がすうっと、退いていく。
泣きそうな顔。
微かに心が痛む。
だからといって、嘘など言えるわけもない。
映樹は静かに深呼吸して、“佐藤さん”を見る。
意外なことに、彼女もこちらをまっすぐに見ていたので、視線が合う。
今までの子と違うことに少し驚いたが、《手紙の返事》を伝える。
「悪いけど、付き合う気、無いから。」
「……そう、なの……じゃあ。」
少しの沈黙の後、彼女は静かにそう言って椅子から立ち上がると、ゆっくり図書室の出口の方へ歩いて行った。
やはり反応も違うことに、映樹は少しだけ訳もなく違和感を持った。