3人の き も ち
「ちょっと気を付けた方が、いいかも。」
「…何にだよ。」
「うーんと、色々、かなぁ?」
「なんだ、それ。」
亜矢子の言っている事が解らない。
映樹は怪訝な表情になる。
と、亜矢子の視線が映樹の後ろに移る。
ヒラッと小さく手を振る。
「早苗ちゃん。」
名前を呼んで、手招きした。
映樹がパッと振り返ると、傍に来ていいのか戸惑っている表情の早苗がいた。
静かに立ち上がり、早苗に近づく。
「来たなら声掛けろよ。」
「えっ…だって、話してたから。」
「大丈夫だよ、早苗ちゃん。勉強教えてもらってただけなの。」
亜矢子がニッコリ笑って、他意はありません、という様に、ノートを持ち上げて早苗に見せる。
「映樹くんの時間潰しもできて、一石二鳥。」
楽しげに笑う亜矢子に釣られる様に、早苗も小さく口元が綻ぶ。
(…笑った)
「早苗ちゃんもやっと笑ったね。」
満足そうな亜矢子の声が、映樹の気持ちを代弁した。