伽羅子
「…特に何も。順調です」

細い声で言う伽羅子。

「そうか?」

俺は椅子に座る。

ギシッ、と軋む音を立てる椅子。

「でも…曽根崎の事が心配でな」

「……」

ハッとしたように、伽羅子が顔を上げた。

…食いついた。

俺は内心ほくそ笑む。

生徒指導室には、俺と伽羅子の二人きりだ。

「曽根崎、まだこの学校に慣れていないんじゃないかとか、友達も少なくて孤立しているんじゃないかと思ってな…俺としても色々気にかけているんだ」

「増川先生…」

噴き出してしまいそうな俺の三文芝居に、伽羅子が呟く。

全く…女生徒ってのは、どうしてこうも単純なんだろうな。

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