ペアリングを外して
「ありがと。すっごくいい思い出になった」
別れ際、駅の改札。
三村はとびっきりの笑顔でそう言った。
「俺も」
名残惜しい。
手放したくない。
でも、そういうわけにはいかない。
なぜなら彼女は、人の女。
一応連絡先の交換はしたが、いつでも気軽に会えるわけではない。
同級生として交換したまでだ。
「じゃあね」
「おう、気をつけてな」
手を振りながら、三村は笑顔で去っていった。
ポケットの中で、携帯が震えている。
もう何度着信をしたことだろう。
俺は観念して、電話に出た。
「もしもし」
「幸雄、お前帰ったの?」
「ごめん、ちょっと知り合いに掴まっちゃって」