ペアリングを外して

 帰らなきゃと言った彼女とホテルにしけ込んでました、とは言えない。

 それらしい嘘をついた。

 新宿とは便利な街だ。

 人が集う。

 よっていろんなことが起こりうる。

「戻れそう?」

「ああ、ちょっとしたら戻るよ」

 俺は駅を出て、三次会の会場へと向かった。

 蘇った感情と、新しく芽生えた気持ちを、このデカい図体に持て余したまま。



「遅いよー」

「ごめんごめん。会社の先輩でに見つかっちゃってさ」

 かつての俺の気持ちを知っている彼らの中にも、嘘を疑うものはいなかった。

 ……はず。

 三村も今頃、相手に上手く嘘をついているだろうか……。






 
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