ペアリングを外して

 俺は身を乗り出し、三村の左手を引き寄せた。

 黙ってその様子を眺める三村。

 薬指の根元を掴むと、ピクッと反応する。

 触れているシルバーのそれを、彼女の指からゆっくりと抜き取った。

「あ……」

「ペアリング?」

「うん」

 俺はそのリングを眺めてみた。

 A to N

 指輪の裏に、そう彫られていた。

「A」

 それが三村の相手らしい。

 俺は指輪を、指ではなく手のひらに返した。

 その上から、彼女の小さな手を包む。

「小出……?」

「ごめん、ちょっと嫉妬した」

 三村はクスッと笑う。

 そして指輪をバッグの中にしまった。

 ちょっとなんて嘘だよ。

 かなり、なんだ。


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