ペアリングを外して

「それ、本当?」

「本当だよ。さっきあっちから電話があったんだ」

「そう。それならいいけど」

 いつものような元気がない。

 そんな三村を放ってはおけない。

 泣き顔なんて見たくないけど、俺が癒せるなら、笑顔にできるなら、これくらいの嘘は許して欲しい。

 モヤモヤの発生源は断ち切れていないが、午後は仕事もこなすことができた。



 そして、夜。

 待ち合わせた場所へ行くと、今日は三村の方が先に到着していた。

 俺に気付くなり、三村は安心したような笑顔を見せる。

 胸に置いた氷が溶けていくような感覚がした。

「昨日はごめんね」

「気にするなよ。とりあえず話、聞かせろ」

 俯いて頷いた三村は、やはり酷く悩んでいる様子だ。

 横でため息を漏らしたのを感じ取り、「俺がいるぞ、心配するな」という気持ちを込めて彼女の手を取った。

 そっと寄り添ってくる三村に、どうしようもない愛情が湧いてくる。

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