ペアリングを外して
少しでも解消しようと頭をガシガシ掻くと、隣に座っている後輩が神妙な面持ちで声をかけてきた。
「小出さん、さっきから呻きっぱなしですけど。らしくないっすね」
「え? 俺呻いてた?」
「はい。うーん、とか、はぁ、とか。資料、そんなに難しいんですか?」
今までにこんなにも仕事が進まなかったことはない。
俺は適当に笑ってごまかして、またパソコンに向かった。
詰まりに詰まった昼休み、俺は決心を下す。
「あ、久美? 俺。本っ当ーに申し訳ないんだけど、今日行けなくなってしまった」
今が大事な時なのに、俺は久美に嘘をついた。
「来週までに仕上げなきゃいけない資料があるんだけど……終わんなくて」
理解のある久美は、それならしょうがないと日にちをずらしてくれた。
そして、すぐに三村に電話する。
「もしもし、小出?」
「おう。今日、彼女と会うのなくなったんだ。仕事が忙しいらしくてさ」
三村にも、嘘をついた。
本当のことを言えば、きっとこいつは自分から身を引く。