ペアリングを外して

「嘘じゃない」

「嘘だもん。携帯見た時だって、湯本さん以外の女の名前なんてなかったし……」

「着信履歴と発信履歴は全部消してたからな」

「家にだって、女の形跡なんてなかったし」

「家に入れたことはないから」

「じゃあどうして? どうして家にも入れたこともない人を選ぶの?」

 あまり言わせないで欲しい。

 一つ一つが、久美を傷つけることだとわかっているから。

 でもそれで俺を嫌ってくれるなら……。

「十年間忘れられなかった女なんだ」

「十年……? それじゃ、やっぱり夏の同窓会で……?」

「うん」

 数秒の沈黙。

 雑踏とテレビの音だけが虚しく耳に入ってくる。

 俺は壁に寄りかかったまま、ズルズルとしゃがみ込んだ。

「ごめん」

「ほんとだよ」

 プツッ

 プー プー プー……

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