甘い蜜



それは穏やかな声ではなく怒鳴り声のようだ。
誰かが口論しているのだろう。


それを遠くにキョロキョロしていると気になる声が飛び込んでくる。


「………でしょう?!」

「だから………」


癇癪を起こしているような高めの声に落ち着いているようでしかし鳴きそうな声。
その声に俺は聞き覚えがあった。


「………麻理亜?」


帰ってきていなかった麻理亜の声だったのだ。


俺は注意深く周りを見渡すと離れた所にある少し自分の立つ階段とは違う造りの階段の途中にその二人はいた。


一人は、会う約束をしていた真理子さん。そしてその隣に家にいなければならないはずの麻理亜。


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