甘い蜜
「あれ?」
しかし、壱斗が麻理亜の服をきつく掴んで話さないからそれが出来なくなる。
俺達は顔を見合わせ、笑う。
「壱斗、離して?」
優しく麻理亜が言うが、壱斗は首を振る。
「いーや!!」
「壱斗………」
困ったように眉を下げる麻理亜。きっと母親が側からいなくなるのは嫌なんだろう。
「麻理亜、座れ」
「?」
「今日は俺が作る」
改めて座り直した麻理亜に俺は、壱斗を渡す。
「作ってくれるの?」
「たまには、お前も休まないとな」
壱斗とうたた寝する位だ。疲れているんだ。壱斗は見破っていたのかもしれないな。
「でも、」
「俺も料理しないと忘れてしまうし」
だから今日は任せておけ、と言うと麻理亜はじゃあお願いします、と笑みを浮かべた。