甘い蜜
その笑みに頷いて立ち上がろうと腰を浮かせる。
「…………壱斗」
「めーっ!」
しかし、壱斗の小さな手が俺の服を掴む。その小さな体のどこにこんな力があるのか、離させようにも離れない。
「パパと離れたくないの?」
麻理亜が聞くと、壱斗は大きく頷いた。
「ママとも離れたくないのだろ?」
俺が聞いても壱斗は大きく頷いた。
求められるのは嬉しいことだが、これでは何もできない。
さて、どうしようか。
「パパは、今から壱斗のご飯の用意をしなきゃいけないんだ」
「うん」
「だから、今は離してくれたら嬉しいな?」
「いや」
「…………」
プイッと壱斗は顔を背けてしまう。勿論手は俺の服を掴んだまま。
ダメだ、これは……俺は、溜め息をついた。