甘い蜜
ああしろ、こうしろ。
命令しては出来なかったら叱られ、出来てもそれが当たり前だと褒めてもくれなかった。
自分の存在って何なのだろうか。
そんなことを毎日考え始めていた。
完璧に出来るのが当たり前だと思っていた俺を変えてくれたのは高校の教師だった。
『完璧過ぎるのは疲れないか?』
もう少し肩の力を抜いたらどうだ?窮屈だろ?泣いてるぞ、お前の心が。
その時は、正直驚いた。
そんなに顔に出ていたのかと。
『別に親に従わなくていいじゃねえか。お前の人生はお前のものだ。他人の思うとおりにはならねえものだ。』
好きなように生きろ、とその教師は言った。
この言葉に俺は救われた。
それから、初めて俺は親父に反抗した。