蒼い月

―複雑な思いを抱え、


校門へと向かう。



「遅かったじゃん?」



いつものようにずっと


待っている晴輝。


いくら遅くなっても


待っていてくれる。


そんなのもう慣れてるはずなのに


今日で最後って思うと急に...


胸が苦しくなるんだ。



ねぇ、どっちが正しいと思う?


夢を追って晴輝と別れる?


夢を諦めて晴輝と同じ高校に行く?


到底、今のあたしには


どっちが正しいかなんて


分からない。


けど。


夢を追うのが...


あたしなりの晴輝に対する


精一杯のお礼だと思うから。


晴輝がいなきゃ、オーディション


なんか受けなかった。


受けなきゃ主役どころか


出ることなんかなかった。


出なければスカウトなんて


当然されなかった。


スカウトされなきゃ・・・


あたしの夢が見つからなかった。


あたしの夢は晴輝が


見つけてくれたものだから。


だからその夢を追うことが


あたしなりの晴輝に対する、


お礼だから・・・



あたしはもう一度唇をかんで


つばを飲み込む。



「晴輝...
あたしね、本当は文化祭の日
スカウトされたの」

「え・・・?」
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