桜の下で ~幕末純愛~
「沖田さん、こっちよ」

美沙子がテーブルに呼び、椅子の座り方を教える。

「今、運んでくるから待っててね。急だったから、沖田さんの時代のような食事は用意できなかったの。大丈夫かしら?」

「はい。頂けるだけで充分です。150年前の者が訪ねるとは誰しも考えませんしね」

沖田はいたずらっ子の様に笑う。

うわぁ。笑うとかわいい!

美沙子がキッチンへ向かい、桜夜と沖田が残された。

う…何か緊張する。

「桜夜さん」

「ハ、ハイッ。ナンデショウ」

何で私がカタコト?

沖田は子供のように目をキラキラさせていた。

「あちらの箱の様なものは?あれは中に人が入っているのですか?」

さっき桜夜がつけたテレビを指していた。

「あ~。違いますよ。電波に乗って…」

ん?どう言ったらいいの?電波も分かんないよね。難しいよ。

説明しようとしても上手く言葉が見つからない。

「えっと…私には説明が難しくて…」

恥ずかしさから少し赤くなって俯く。

そんな桜夜を見て、沖田はクスッと笑う。

「そうですか。桜夜さん達には日常であって考えるものではないですしね」

「あっ、でもっ、出来る限り説明するから。ガンガン聞いて下さい」

「がんがん?」

「あぁ…えっと、たくさん?どんどん?いっぱい?」

「はい。解りました。“がんがん”聞きますね」

沖田の返しに思わず二人は見つめあいながら笑った。

そこに美沙子が料理を運んできた。

「仲良くなれたかしら?」

やだ、お母さんってば。恥ずかしいよ。

赤くなって俯く桜夜。沖田は笑って答える。

「はい。桜夜さんはとても可愛らしいですね」

「お、お、お、沖田さんっ」

そんな二人を見ながら食事を並べ、美沙子も席につく。

並べられた物を見ながら沖田がまた目を輝かせた。

「見た事がない物ばかりです。“みらい”とは楽しいですね」
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