きみに守られて
「車上荒し!?」
ユリツキは手ごろな場所にあった車に目をつけ、
拾った針金製のハンガーでドアを開ける。
キーホルダー代わりの
ツールナイフでエンジンをかけた。
”そう、車上荒しだよ”

行動の鮮やかさに呆れる優里は
限りなく低いテンション。

「本物のドロボーだ」

「ここ十年くらいやってないよ。久々だよ」

自信満万に発言する男。
そんな問題ではないという顔をする優里。

「グローブボックス開けてみて」

「なんですかそれ?」
シートベルトを握り締め、
キョロキョロ眼を泳がせる優里。

「ほら目の前にある
そのボタンみたいなヤツ回して、
手前に開けてみて」

「これですか?」

「中に、なんか入ってない?」

グローブボックスの中から
封筒らしき物を見つけ優里。

「お金が入ってますよ!
すっごい!いくら入ってるの!?」
興奮気味で封筒を遠目でのぞき彼女は
マジックの種明かしでもするように、
あらゆる角度でながめていた。

「運がいい」
ユリツキは淡々と言った。


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