きみに守られて
彼女の周りにいる者たちは
事務所関係の人々だ。
近くに所属事務所がある事は
前前からユリツキも知っていて、
内心
(何時か偶然に会える事があるかも)
甘ったるい考えも微妙に持っていた。


心情崩壊寸前の男、
不審な事に気づく、
音が聞こえないのである。
車の音、
人の声、
そこら中にある雑音が無い。

静寂、
音が止む、
もっと脅威なのは動く物がない。


人として一番大事で
自然に感じられる
身の回りの状態が、
何時、
こんな風になってしまったのか、
も、
解らない程
ユリツキは大島優里に
緊張したのか、と思う。
しかし、
あまりにも鈍感であった。

無音なのだ。

時間が止まった瞬間が分からなかった。


「なんだよ!なんだよ?」
自分の声がはっきりと解る、
「なんだ!なんだ!」
解りすぎて二回も言った。

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