きみに守られて
その過去が、記憶が、
再びユリツキを
差別と虐待の日々へと連れ戻しにくる。


ベッドに横になるだけで
涙が大量に零れ落ち、
言い知れぬ不安だけが圧し掛かる。

「朝なんて・・こないで・・こないで・・」

二十歳をすぎた男の口から
迷子の幼児のような声が虚しく零れる。
「助けて、助けて、どうしたらいいの?」

己の為の孤独、
他人の為の孤独、
人はどちらかを選び、
生きていかなければならないのか。

「誰か・・誰か・・
頑張れって言って・・
誰か僕に・・言って・・・」


体を丸め膝を抱え泣きじゃくる。

睡眠が許されていたら
多少は救われてたかもしれない。

朝がくると、
欲にとらわれた人間が呼びに来くる。
ユリツキは無表情で
また人を殺しに行く
”生きて行くための仕事”と
名前を変えた公開処刑場へ。

過去の、
記憶の奥の、
イジメられた小学校へ。


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