きみに守られて
『再会』
寂びれた商店街の
冴えないオブジェのような”物”。

誰かが道端に置き忘れたような”物”。

見れば人の形をしているのに
ピクリとも動かず、
生命維持の為に
腹部と瞳の瞬きだけが
規則正しく起動している。

呼吸をしながらに、腐ろうとしていた。

ユリツキは救いがたい愚か”物”になった。



空白の街に時が流れる。
清流の如く。

風が吹く
うすい、はなだ色のように。

真新しい都会の
廃墟の群れに雨も降った、
何一つ洗い流さない雨である。


人の孤独など
あざ笑うかのような
太陽光線も降り注いだ。

眩しく照付けるだけの光だった。

六日後、
風化でもしそうな、
ユリツキの前に
大島優里が立っている。

「ユリ兄、
あんまり遅いから迎えに来たよ・・」

優里は汚物化したユリツキを
戸惑う事なく自分の車に乗せ、
築き上げた彼女の楽園に運んだ。

自分のベッドに寝かせ
「おかえりなさい・・」
と恬として囁いた。

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