ゆめ・うつつ(さみ短3)
久しぶりだった、と、思う。
夢なのに、両手で刀を扱う感覚は、とても、鮮やかだった。


見なれない服装。
誰もが髪を切りそろえていた。

夢の中で八郎は、悟志という青年になっていた。
そこは、争いのない、安定した世界のようだった。

武士を必要としない、世界。
美味な食べ物が豊富にあふれていた。
争いに巻き込まれて財産や家族を失った町民など、ひとりもいなかった。


八郎が生きているこの時代から、150年ほど後の時代。
もちろん、ただの夢だとわかっている。


それでも。


もしも本当に、自分たちがこうして戦っているその先に、あんな平和な世界があるのだとしたら。


「おいらたちが、こうして生きて戦っていることも、全く無駄じゃねぇのかもしれないな」

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