ゆめ・うつつ(さみ短3)
勝ち負けが問題ではない、と、八郎は思っている。

幕臣として、正しいと思うことに殉じていく。

そんな生き方をする人間がいたということが、こんな、大きく世界が変わっていく時代には必要だ。

誰も戦わなければ、正しいものが正しくいられなくなってしまう。

正義は、そして誇りは、勝つことが重要なのではなく、貫くことが重要なのだ。


そう思っていても。
無駄死には、やはり空しい、と思う。


だから。


この身は、いずれ北の果ての蝦夷で散っていくしかないとしても。
せめて、その先にあんな世界が作られるのだと、信じたい。

はかない祈りだとしても。


それに。


もしもあの夢が事実ならば、八郎の思いを、きっと、悟志が継いでくれる。

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