金魚玉の壊しかた
土下座して謝りたかった。


「すまない」

しかし、そんな謝罪を口にしたのは虹庵のほうだった。

「鳥英殿を困らせてしまったね」

彼は苦笑いして、

「だけど、私も男なんだ」

整った眉を歪めた。

「あなたがあんまり酷なことを言うから──つい、恨みがましいことを口にしてしまった」


酷なこと。

何を指して紡がれたものなのかわからず、私はぼう然と虹庵の顔を眺めていた。


すると、虹庵は困ったように小さく肩をすくめた。


「私と一緒になれば幸せになれる、私を愛してくれると──あんなにハッキリと言われたら、諦めたくても引きずってしまうよ」


今度こそ──私は凍りついた。


いいんだ、忘れてくれと虹庵はいつもの穏やかな表情に戻って言って、

どうか今日のことで気を遣わず、これまで通りここに来てほしいと、
そしてまた絵を描いてほしいと、

そう告げて私を帰した。
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