金魚玉の壊しかた
金魚などという高級な魚に手を出すような家は、当然家禄も高くそれなりに家格のある裕福な家だ。

そのついでに絵を見せて回るということは、当然私の絵もそういった家の人間の目に触れるということではあった。


しかしまさか、遊水に頼んだ絵が、このような形の未来に繋がるとは思いもしなかった。

少しも嬉しくはなかったが、それでも私は絵を勧めてくれた遊水に感謝した。


皮肉なことに、恋した人の助けによって、恋した人との仲は完全に絶たれ、

しかしこれで──雨宮の家は救われる。


叶わないとわかっていた恋だ。

いずれ終わるものならば、その人がもたらしてくれた幸運を受け入れようと思った。



絵ではなく私にのみ興味がある泉殿は、ひょっとすると嫁げば絵などもう描かせてくれないのではないかという気もしたが。

これが

虹庵の愛を断り、遊水に「金魚玉の金魚だけを愛でて生きる生き方はしない」とそう言った私の

選ぶべき道だ。



それでも最後にもう一度だけ遊水に会いたいと思った。



しかしその願いは成就せず、ただちに長屋を引き払って戻ってこいという兄たちの言葉に従って、私は住み慣れた庵を後にした。


虹庵にだけは、世話になった挨拶を済ませ、縁談がまとまりそうだという話をして、


「そうか。おめでとう」


笑顔と一緒に彼がくれた言葉を大切に胸の奥にしまって、



私は武家の女に戻った。
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