金魚玉の壊しかた
私は顔を動かして、そっと横を見て──




──本当に覆面頭巾だな、と思った。




隣に座る男は、首から上を目元以外全て頭巾で隠しており、肩の辺りまで垂らした長い布によって、どんな面立ちなのか全く窺い知ることはできなかった。

唯一覗く目元も、夜の灯りの下では闇のように暗く閉ざされていて見えない。


──これが、伊羽青文か。


まさか祝言の席でも覆面姿とは。

あっけにとられて思わずしげしげと眺めてしまって、家老家の娘にあるまじきはしたない真似をしたと慌てて顔を伏せて、



ふと、



婿殿の、扇を握る手が目に入った。





私はそっと顔を向けて、もう一度、隣に座る男を穴が開くほど覗き見た。

とてつもない違和感が、全身を這い上った。
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