金魚玉の壊しかた
その後は、式三献、三三九度で器用に口元だけの布を外して覆面のまま盃を傾ける婿殿、宴、何もかもがどう進んだのか私はまるきり記憶がなくて、



気づけば宴席は終わり、私は伊羽家の屋敷の奥の寝所に一人座して、ここに現れる相手を待っていた。



ただ一つ、

青文が組頭を務める同じ大組の部下であるからという理由で、参勤に従って江戸にいる結城家当主代理として祝いの席に招かれていた結城円士郎が進み出て、青文と会話を交わしていた時にだけ、

私の意識はその場にあり、
会話の内容は耳と記憶にこびりついて鮮明に残っていた。


「円士郎殿、許されよ。今宵、彼女には全てを話す」


青文は、くぐもった声音で覆面の奥からそう言って、


「どうか達者で」


と、別れの言葉を口にし、それを聞いた円士郎が戦慄した顔になった。


「あんた、まさか──そういうつもりで……」

円士郎は奥歯を噛んで、

「俺は、あんたはこの国に必要な人間だと思っている」

青文に言ったのか──それとも私に聞かせるために言ったのか、キッパリとそう言い切った。


「それは、私や貴殿が決めることではない」


円士郎の言葉に対し、青文もまたキッパリとそう言って、


「彼女には、知る権利がある」


覆面の奥の目は私を見つめていた。
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