金魚玉の壊しかた
しかも──

しかも──


彼は家中の者の生活を案じ、
自らリスクを背負おうとする、

そんな人間だった。


昨日私が目にした、

一瞬で浪人たちを打ち殺し、平然と拷問という単語を口にした男の姿には、冷徹な伊羽青文という人間が垣間見えていたのだろう。


思えば、
あの時、捕らえた者をどうするかと尋ねた円士郎に対し、青文が拷問しろと言ったあの会話も、
盗賊改め方が家老の下に置かれた組織であり、
組頭でもある青文が円士郎の上役に当たることを考えると、

『部下が上官に指示を仰いで上官が拷問を命じた』

という、自然な会話だったことになる。


しかし伊羽青文は、そんな命令を下す冷酷なだけの男ではなかった。




例え父が死の間際まで恨んでいた政敵でも、

私には──




この人を憎むことはできない、と思った。




「私は──私は、やはりあなたが好きだ、青文殿」


彼の本当の名を呼んで、私は自分の思いを伝えた。
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