金魚玉の壊しかた
「あなたが伊羽青文だったと知っても、雨宮家の敵でも、それでも私はあなたが──」


「亜鳥」


金魚のかたわらに座り込んでいた青文が、静かだが鋭く言ってすっくと立ち上がった。


「『雨宮家の敵』ではない。昨日も言っただろう」


その場に立って私を見据え、青文は噛んで含めるように私のセリフを訂正した。


「私は『お父上の仇』だ」

「違う! 父が切腹したのは、あなたを闇討ちにしようとしたからだ。あなたのほうが被害者ではないか。
それを仇と解釈するのはただの逆恨みだ!」


青文の瞳に、私を憐れむような色が滲んだ。


「亜鳥、お前は何も知らない」

「何を知らないと言うのだ?」

「あれはただの戯れ言だったのだろうが──奇しくも、昨日の投げ文に書かれていて、亜鳥が知りたがった真実をだ」


私は動揺した。


「どういう……意味だね、それは?」


青文はしばらく瞑目してから、「先に見せておくものがある」と言って、障子に手をかけ庭に面した廊下に出た。

リイ、リイ、と聞こえていた虫の声が、ぴたりと止んだ。


「ついて参れ」


そう言って、彼は先に立っていずこかに向かい歩き始めた。
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