金魚玉の壊しかた
毒の分量を誤ったために殺しきれず、この通り正気を失い、言葉も失い、獣のような無様な姿となって、五年間ここにいる。
笑えるだろう、私を閉じこめた時間より更に長い時間だ。

牢の中へと冷ややかな──それでいて苦しみに満ちた視線を注いで語る彼の声は、現実のものではないかのように遠く聞こえた。


「毒……殺……」

「亜鳥、私は──伊羽青文という男はな、」


目の前の光景と、彼の言葉が届いてはいても、それらは非現実的で

私の頭が現実を受け入れることを拒んでいるかのようだった。


「私をここに閉じこめて玩具にした父と三人の兄たちをこの世から消して、五年前に伊羽家を乗っ取った──極悪人だ」


「……嘘だ……!」


「皆殺しにしてやるつもりが、まさか自分でもためらうとは驚きだったが……そのせいで、父上だけはこのとおり、まだ生きている」


「な……何を言うのだ……」


「ようく見ろ。これが、若くして国を救ったともてはやされ、お前が輿入れした城代家老の、軽蔑すべき真の姿だ!」


ぱたたっと、座り込んだ膝の上に置いた手を、温かい雫が打った。

私自身の頬から落ちてきた涙だった。



「どうして……」


綺麗なままにしておきたかったびいどろの世界に、本物の罅が入る音を聞いた。


「どうして、こんなものを見せるのだ……?」


見たくなかった。


泣きながら、私はユラユラと水の底に沈んだ視界で彼を見上げた。


「どうして、こんな話をするのだ……?」


聞きたくなかった。


私が知る彼は、どこか得体の知れないところがあって、けれど偽りのない優しさを持っていて


彼が時折見せた悲しみや苦しみの裏に、私の知らないこんな真実があったなど、どうして想像できただろうか。
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