クロスロードラヴァーズ


「いっ……嫌や!!」


郁は、両手で火槌の体を押しのけようともがいたが、火槌は全く動かない。



「足掻いてもムダだぜ、郁?時神の力の前では、他の力なんぞ、無力に等しいんだからな。」


「嫌やて!離してや!せやないと、泣く!あんさんの一張羅、涙でびしょびしょにしてやるわ!」


「できるならやってみろ。泣けないようにきつく抱きしめてやんからな!」


「最悪や、あんさん!非道や……。オレが何したって言うねん……。」


「………。」


本当に泣き出してしまった郁を見て、なぜか火槌は無言で彼女から離れた。



「えっ……?」


郁は驚いて、涙を浮かべたままの目で火槌を追う。



「そこでマヂ泣きするかよ、お前……。軽く引いたぜ?」
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