種のない花(15p短編)
 二人の母親は同じ悩みを分かち合い、共に公園デビューも果たし、自然と、俺と梨果も一緒に要るのが当たり前になっていった。

 第一子という事もあり、梨果は、蝶よ花よと甘やかされて育つ。
 いや、別に顔自体は特別綺麗でもなく、普通だと思うんだけど。

 うちの親までそれに乗っかり、「女の子は可愛くていいなぁ、洋服選びも楽しそう」と羨む始末。
 そんな経緯で、「孝太は梨果ちゃんよりお兄ちゃんなんだから、梨果ちゃんを守ってあげなきゃ駄目よ」と、聞きあきる程聞かされて育った。

 梨果もまた、「梨果には孝太君がついているから大丈夫よね」と言われて育ち、俺が守ってくれるのが当たり前のように振る舞う。
 虫がいると俺に泣きつき、いじめられたと俺の背中に隠れ(こんな名前をつけた梨果の親が悪いと思う)、本当の兄妹よりもべったり引っ付いていたんじゃないだろうか。


 まあ、なつかれれば悪い気はしない訳で。
 大きくなってからは、気恥ずかしさに校内で少し距離を置いたが、家に帰れば一緒に飯を食ったり、仲良く過ごした。

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