種のない花(15p短編)
中学三年の冬。
受験も目前に迫り、友人とも梨果とも遊ぶ余裕はない。
頭が良い方ではなかったので、特に。
下手に顔を合わせると八つ当たりしてしまいそうで、自由登校になってからは学校へもあまり行かなくなった。
雪の降る静かな夜。
二階の部屋の窓から、サクサクと雪を踏みしめる音が聞こえる。
それだけなら特に気にも留めなかったが、足音は家の前で、迷うように続いていた。
サクサクサクサクサク
止まったと思うと、少ししてまた再開する。
気が立っていた俺は、外の不審者を一発怒鳴り付けてやろうと窓を開けたのだが、音の主を確認し拍子抜けした。
「何やってんだお前」
コートにマフラーに手袋と、考えうる限りの重装備で着膨れた梨果が、寒さで赤くなった頬を上げる。
「こうちゃん!」
階段から滑り落ちそうになりながら、駆け下りて向かう。
玄関を開けると、満面の笑みを浮かべた梨果から、小さな袋を差し出された。
御守りだった。
「これで大丈夫だよね、こうちゃんと梨果、一緒の高校行けるよね」
鼻まで真っ赤にした梨果が、嬉しそうに話すから。
確かに俺は馬鹿だけど、お前はそれより更に成績が悪い事を忘れてないか?
という内心を隠し、礼を言って受け取った。
受験も目前に迫り、友人とも梨果とも遊ぶ余裕はない。
頭が良い方ではなかったので、特に。
下手に顔を合わせると八つ当たりしてしまいそうで、自由登校になってからは学校へもあまり行かなくなった。
雪の降る静かな夜。
二階の部屋の窓から、サクサクと雪を踏みしめる音が聞こえる。
それだけなら特に気にも留めなかったが、足音は家の前で、迷うように続いていた。
サクサクサクサクサク
止まったと思うと、少ししてまた再開する。
気が立っていた俺は、外の不審者を一発怒鳴り付けてやろうと窓を開けたのだが、音の主を確認し拍子抜けした。
「何やってんだお前」
コートにマフラーに手袋と、考えうる限りの重装備で着膨れた梨果が、寒さで赤くなった頬を上げる。
「こうちゃん!」
階段から滑り落ちそうになりながら、駆け下りて向かう。
玄関を開けると、満面の笑みを浮かべた梨果から、小さな袋を差し出された。
御守りだった。
「これで大丈夫だよね、こうちゃんと梨果、一緒の高校行けるよね」
鼻まで真っ赤にした梨果が、嬉しそうに話すから。
確かに俺は馬鹿だけど、お前はそれより更に成績が悪い事を忘れてないか?
という内心を隠し、礼を言って受け取った。