種のない花(15p短編)
 この頃から、自分は梨果が好きなのだという自覚があった。
 妹としてではなく、女として。
 自意識過剰だと言われそうだが、同種の好意を、彼女からも感じていた。

 受かったら告白しよう。

 その一心で勉強に励み、二人一緒の高校に合格できた。
 世間一般から見ればバカ校の部類になるが、俺達にしては健闘した方だ。


 両家で一緒になってお祝いした夜。
 途中から主役を忘れて飲んだくれている両親を置いて、「暇だから何かして遊ぼう」と梨果を誘った。
 久し振りに入る梨果の部屋は、いかにも女の子という様相で、緊張から半端なく掌に汗をかいていた事を今も思い出す。

 告白の台詞は、至ってシンプル。

 「UNOが見付からない」と、引き出しを覗き込む彼女の後ろで、今がチャンスだと自分を奮い立たせる。
 面と向かって顔を合わせたら、照れ臭くて言える自信がない。


「好き」


 彼女のベッドに座ったまま、その背中に話しかける。


「梨果が好きだ。兄妹みたいな気持ちじゃなくて」

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