この恋だけ、
ピピピピッ


体温計の音がなる。


いけない、また折原にみとれるところだった…
慌てて目を離し、体温計に目をやる。


…五度二分。


低っ!
いっつも六度代なのに。


ピピピピッ


今度は折原のがなった。
体温計を見た折原は、少し驚いた顔をした。


『どうしたの?』


『八度代。』


面倒くさそうな顔で、こっちを向いた。


『うつさないでね。』


なんか、私の心の中は、ざまあみろ的な気持ちでいっぱいだ。


私の言葉に、折原の眉がピクッと動いた。
なんだ、その反応。


『…』


折原が動かない。
突然、折原の口に笑みが。

気味が悪い。


『…何よ。』


『キスでもしない限り、大丈夫なんじゃない?』


『キス』のところだけ妙に強調して、ニヤニヤしながら折原が口を開いた。


…キスって!
いきなり何を言い出すんだ。


『熱ある人が、よくそんな冗談言えますね。地球には、空気感染と言うものがあるんですよ。』


『…冗談なんか言ってないよ。キス、してみる?』


からかうようにこっちを見る。
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