オフィスレディの裏の顔
あしながおじさん
 入社して3か月たった12月、派遣更新の時期になった。私は思っていた以上の重たいものを運ばされることに不満をもち辞めたいと告げた。けれど派遣営業の千野さんは社会人1年目で私が初めての担当であったのと、キャリア派遣会社からこの会社への派遣は私が初めてだそうで、私がすぐに辞めてしまうのは以降の営業に影響するからと、何とか私を引き止めようと必死だった。年末年始に転職が難しいことを予想し、時給を上げてもらうことで私は春まで契約更新することにした。それに春になれば彼氏は卒業して社会人。結婚への期待も少しもちつつ・・・。だけど職場の人間関係ストレス以外は何も刺激のない毎日に心半分死にかけていた。私はある人に連絡をとった。

 恵一さんとの出逢いは3年前、紀香さんが面白い遊びがあるから一緒にどぉ?と誘われた時だった。私は紀香さんに連れられある土曜日の午後2時ごろ、赤坂駅から徒歩2分くらいの裏通りにあるお店に入った。中はすごく広くて壁一面鏡になっている。たぶん夜はキャバクラなのだろう。支配人の男性はまだ30代。彼から登録用紙を渡され私たちは席についた。説明をきいていてここがデートクラブだということがわかった。昼間は会員制デートクラブ、夜はキャバクラ。吉牛を食べたこともないお嬢様である紀香さんがなぜこんなとこに興味をもったかは謎。

「説明は以上です。登録は自由ですからよく考えてください。私は一度席を外しますので。」

「偽名登録でも大丈夫ですか?」

「大きな声では言えませんが、身分証で年齢確認だけさせてもらえれば・・・」

「わかりました。」

支配人が退席すると、紀香さんは私を口説き始めた。

「お相手と関係をもつのが嫌なら、お茶するだけでもお金がもらえるのよ!登録しましょ?」

「でもついてったら無理矢理ってことも・・・」

「大丈夫よ、男性は身元確認してるってさっき言ってたじゃない!変な人はいないわ。」
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