オフィスレディの裏の顔
興味はなかったけど、私から上野さんに質問してみた。

「上野さんはどちらに住まわれてるのですか?」

「この近くだよ。」

「マンションですか?」

「いや、一軒家。でも1人だから広くてね。無駄になってるよ。」

銀座の近くで一軒家?随分な資産家じゃない?酔ってるせいもあって、私は興味ありげに、すごいすごいとはしゃいでしまった。

「梨香ちゃんさえ良ければ、うち見にきますか?」

「・・・ごめんなさい。今日はこのあと用事があって。」

いきなり家に誘うなんて!見ず知らずの人の家にいきなり行くような子に見えたのだろうか?相手の家に行ってしまったら治外法権もいいところ。何かあっても誰も助けてくれない。私は嘘だとわかる嘘をついてお断りした。

「やっぱり僕の顔が気持ち悪い?」

確かに生理的に受け付けないけど、そもそもそう言う上野さんのデリカシーのなさが一番気に入らない。うん、なんて言えるわけないもの。返事をしなかった私に上野さんは諦めた様子だった。

「用事があるのならそろそろ出ましょうか?」

まだ会って1時間くらいしかたってないのに、目的が叶わぬと知ると去るのは早い人のようだ。私が黙って下を向いていると、テーブルの上に封筒がおかれた。

「今日はありがとう。僕みたいなのに付き合ってくれて。君のような綺麗な子と食事できただけで嬉しいよ。」

その最後の言葉が私の心に突き刺さった。もう少し楽しそうにしてあげればよかったな・・・
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