オフィスレディの裏の顔

よく高級クラブのお姉さんたちがお客様にマンションを買ってもらったという話は耳にする。しかし、ある日突然、そのような場所に出入りもしていない私に、こんな状況が訪れるとは思ってもみなかった。クラブのお客様なら、まだ身元もはっきりしているだろうが、私はオークラの名刺すら頂いてない。単にお姉ちゃんと遊びたいじぃさんが、甘い言葉をえさに誘惑しているだけかもしれない。不安もあったけど、この先どう展開していくのか興味があったので、日を改めてオークラと会う約束をした。

　その日もギャルのメッカ１０９地下のカフェラミルで待ち合わせをした。

「オークラ、お待たせ。」

「おう、そこ座って何か頼みなさい。」

私はまたホットココアを頼んだ。

「美鈴、今日は時間あるのか？」

「はい。ランチご馳走してくださるの？」
「いや・・・」

「何ですか？言ってくださいよ〜」

「美鈴、スッチーには本当になりたいのか？」

「なぜ今そんなこと聞くの？」

「自由が丘あたりにお店買ってやるからカフェやらないか？」

「はぁ？」

唐突すぎて彼の目的がわからなかった。

「スッチーになったって安い給料で仕事大変だしいいことないぞ。」

「なんでカフェなの？しかも自由が丘って決まってるの？」

「自由が丘でカフェができるんだぞ！おしゃれじゃないか！資金は私が出すし美鈴の好きなようにやればいい。」

「・・・」

「お前、免許は持ってるのか？」

「調理師ですか？」

「何を言っとるんだ、運転免許だよ。」

「持ってますけど・・・」

「じゃ車を買ってやろう。何がいい？」

「車よくわからないし・・・」

「お前は欲のないやつだなぁ。」

でも本心はしっかり現実をみていた。車なんて買って貰っても毎日乗らないし駐車場代、維持費、税金、かえって自出費が増えてしまう。だったらお小遣いを貰ったほうがマシだと頭では計算していた。