お家に帰ろう。
「何の用事だったの?」


哲司の質問に、一度、部屋の外の様子をうかがい、またドアを閉めるも、
さらに小声で話す遥。


「明ね…妊娠したんだって。」

「え?」

「赤ちゃん!できちゃったみたいよ、明!」

「……嘘だろ?」

「こんなこと、冗談で言えるワケないでしょ!」

「だって…え…明は?」

「しばらくは、向こうの家に居るんだって!」

「なんで?!」

「うちの親が反対してるから。」

「反対?…アイツ産む気かよ!」

「…テツはさ、相手、知ってるの?」

「え!…」

「なんか、難しい事話してたよ。後継ぎがどーのこーのって…お母さんが一番気にしてた事だよねえ?」

「…そーだな…ちょっと一回切るわ!ごめん!」



切った電話を持ったまま、部屋中をウロウロしながら、頭をかき、考えを整理しようとする哲司。

が、そうしているうちにも、将人から電話が入り…


「帰ってきたって?」

「あー、なんか、友達の家に居るみたいだよ。」

「は?誰?」

「知らない。」

「…アイツの携帯、留守電になっちゃうんだよ。」

「そーなんだ。」

「…おまえ、何か知ってんな?」

「!」

「言え。」

「知らないよ」

「言えって!!」

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