お家に帰ろう。
大貫家の門の前に立ち、
インターフォン越しに興奮しながら、用件を怒鳴り散らす将人。


哲司のフォローのお陰もあって、玄関まで進むことが出来たにもかかわらず、
勢いにまかせ、勝手に中に入って行こうとする将人を、哲司は必死に押さえ付けていた。


「これは威勢が良いですね。」


穏やかに現われたのは、
以前に、哲司とは面識のあった顔だった。


「明を出せ!」

「今ここには居ないと言ったはずです!」

「どこに隠した?」

「ふうぅ…別荘の方へ…今は大事にしなければならない時期ですからね。」

「それはどこだ?」

「今の君には教えられない。ろくに話しすら出来ないじゃないか。」

「あんたの話なんか聞く気ねんだよ!そんな都合良い話になんか…騙されないからな!」

「…困りましたね!明の話とは、だいぶ違う方のようで…」

「何をどう言い包めた?!」

「言い包めてなんかいませんよ!」

「嘘だ!」

「すべて、彼女の希望です!」

「ふざけんな!あいつは、今の家族が好きなんだ!」

「分かってますよ、そんなことくらい!」

「今頃出てきて邪魔すんなよ!」

「私は協力するつもりで」

「いらねーよ!あんたの助けなんか要らねんだよ!」

「じゃなきゃ、あなたの子はどうなるんですか?戸籍に父親の名前の載らない、そんな不敏な思いをさせても良いとでも?!」

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