お家に帰ろう。
「ご両親には私の方から、きちんと説明させて頂きます。安心して、任せては貰えませんか?」

「…」


さっきまでの勢いはどこに行ったのか……


物静かな口調で語られる、冷静で正確な意見が
小犬のように吠え捲る将人を押し沈めたのだ。


穏やかながらにも、厳かな一面を見せる大貫の前では、負けを認めるしかなかった将人。


(完敗だ…)


はじめから歯が立つ相手ではなかった。


「今日はもう遅いから、泊まっていくといい。」

「いいえ、そんな!」

「しかし、そちらの彼は、まだ未成年なのでは?」

と、突然、哲司に向かって目配せをしだす大貫。


それは、将人より先に面識があったことが知れて、また厄介なことになるのを避けるための合図だった。


中へと通された二人は、タオルケットと毛布ん持たされ、ゲストルームへと案内された。


「あとは自分達でやってもらおうかな。妻はいないし、手伝いの者も朝にならないと来ない。呼べば、きっと大騒ぎになっていただろうしね。」

「すみません。」

「いや、いいんだ!息子が居たら、こんな感じなのかと…」

「…」

「昔、父親が言ってました。女性は母親になると、ずっと強くなるものだと…君も覚悟しておいた方が良さそうだ。あははは。」

「あのっ!」

「はい?」

「色々と…宜しく御願いします!」

< 267 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop