お家に帰ろう。
たまらず、深々と頭を下げていた将人。


その肩を、ポンポンと叩き、
大貫は部屋から出て行った。


その後ろ姿は、将人の目に、
なんとなく寂しく映って見えた…



二人きりになった将人と哲司は、それぞれのベッドに横たわった。


高級過ぎるという訳ではないが、なかなか寝付けずにいる将人に気付き、哲司がそっと話し掛ける。


「マサ君。」

「ん?」

「なんかさっき、ドラマのワンシーンみたいだったよ。」

「あぁ?」

「ほら“娘さんを僕に下さい!”ってアレ。あの人も、明を育ててきた訳じゃないけどさ、一人娘を嫁に出す父親には違わないんだし。」

「…そーだな。そんな経験、明とは必要ないと思ってた。つか、想像もしてなかったよ。」

「だよね。あのままなら花嫁の父は、マサ君の親父さんだったんだもんね。」

「…明なりの、父親孝行のつもりだったのかな?」

「かもね。“いーひと”だし。」

「……。」

< 268 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop