お家に帰ろう。
市川は、コートに入った1分間で、4ゴールを決めてきた。


そのあっという間の出来事に、
明はツバを呑み込んだ。


他の選手に比べて、体力があるのは当たり前だが、
一年生ということに油断したのだろう。

マークが甘かったせいか、
そのスピードについていけず、
市川はノーマークに等しかった。


まだ、情報が入っていなかったにしても、
ノッポはのろま…そんな固定観念は、このご時世、捨てた方が良いだろう。


相手校は慌ててタイムをとった。


これが作戦だったのか?…いや、そうでも無いらしい。

市川へのマークがきつくなっても、相手校との点差は縮むばかり。


その分、マークの甘くなった所ができたのだ。

しかもこの男、
ちょっとくらいのマークなどスルリとかわしてしまうし、
さらに、
ガードもセンターもこなせる、
マルチプレイヤーときたものだ。


そんな哲司の解説を聞きながら、黙って試合を追う明だったが、

「出し惜しんでたってわけ?」

「あいつ、相手チームのメンバーを、自分で視ないとダメなんだって。」

「いったい何者?」

「今はまだ無名…海外の転校が多かったせいでね。おかげで、観察眼が養えたんだと。」

「…なるほどね。」


市川の性格が慎重で、
かつ、
勘が良い理由が解った気がする明だった。

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