お家に帰ろう。
付き合い始めたばかりと言っても、
哲司とえっちゃんは、
毎日学校で顔を合わせているだけあって、
とても仲が良く見えた。


性格もあるのだろうけども、
時折、身体に触れたりしてても、ベタベタして見えはしなかった。


これを自然と言うならば
明と市川は、不自然なのだろう。


まだ、手も繋いだことがなかった二人は、哲司達を意識していた。


でも、この状況で、慌てて繋ぐモノでもないし……

すると、

「俺達はさ、俺達のペースでやっていこう。」

市川が優しく言った。


「うん。」


その瞬間、
そんな市川の、手の温もりを感じたくなった明は、
そっと、自分から手を重ねていった。


一瞬、驚いた様子の市川だったが、
優しく、その手を握りかえし…
しばらくの間、
二人の世界に慕っていた。



「あ、いたいた。」

哲司達と、はぐれたことにも気付かずに…

「シッ!ちょっと見てぇ!…手繋いでる〜!」

「…ホントだ。」

「あんな市川、見たことない〜!」

哲司達に、見られていたとも知らず…

「ね、もう少し、二人だけにしてあげない?」

「え?……あぁ。」


そして哲司も、
あんな明を見るのは、初めてのような気がした。

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