お家に帰ろう。
ソファーの背もたれに頭を乗せ、天井を見上げて哲司は言った。


「おまえ、随分と慣れてんなぁ…キス。」

「…」

「なんで?」

「それなりに。」

「俺の知ってる奴か?」

「内緒。」

「…ま、あれだな!イッチーのことは…心配しなくて良さそうだな!」

「これだけは言える。」

「ん?」

「ほっといて!」

「はいはい。じゃあ俺、帰んます。おじゃま。」

「あーい。」



靴を履いてドアを開け、
何歩か進んだ所で、ポケットに手をあてた哲司は、

「あ、ねえや。」

携帯電話が無いことに気付き、
戻ってドアを開けると同時に、

「ねー!ケータイない〜?!」

でっかい声で叫んだ。


玄関先で携帯電話を渡され、再度家から出た時、

「おう。出かけんのか?」

帰って来た将人とはち合わせた。


「んあ。ちょっと。」

「いってらっしゃい!」

「いってきます。」


罪悪感からか、すぐに背を向ける哲司。


「ただいまあ。」


将人の声に振り返り、


「あっぶねー。ギリ!(…あ、だからか?)」

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