お家に帰ろう。
頭では分かっていても、
言葉にできないことがあることを知った。


今、二人は、生まれたままの姿でベッドにいる。


そんな状態で喧嘩をするほど、
勇気はなく、
泣いて誤解をとくほど、
まだ、深い仲ではなかった。


でも、こうなるには、それなりの意志があったわけで、
その余韻に浸っている間もなく、
市川の口から出た言葉に、
幻滅したのは間違いなかった。


市川が哲司との関係を気にしていることは、
哲司から聞いて知っていた。


でも、こうなったことで、
そのことはもう、
市川自身の中で解決してもらえたものと考えたかった明は、


(どうして今？)

その言葉が言えずにいた。


こうなる前に、直接聞いてくれたなら…


「ごめんね。あたし、やってみないと相手が分からない人間なの。」


そんな言葉を言わずに済んだのに。


市川は、良い人に見えて、
実は
人を傷つけていることに気付かないタイプの人間なのかもしれない。


(このパターンは…好きじゃないかなぁ。ちょっと残念。)


友達である哲司は、何度も否定しているはず。


それでも疑う市川は、
この先も、ずっと
哲司との仲を、疑い続けるのだろう…。

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