臆病者の逃走劇
(だめだめ、早く起きて出て行ってもらわなきゃ)
首をぶんぶんと振って考えを振り払い、そして彼がもたれて眠っている机をトントンと叩く。
「…東条くん、起きて」
「………」
「戸締りしなくちゃダメなんだけど…」
情けないことに、なんでかわからないけど、声が震えた。
喉がかわく。
緊張、する。
どうやら東条くんは爆睡しているみたいで、机を叩くだけじゃピクともしなかった。
困る。
触るのは、なんだか気がひけるし。
でもこのままじゃ駄目なわけで。
「東条くん…」
もう一度だけトントン、と机を叩いてみて起きないことを確認して、
私は仕方ない、とため息をついた。
…普段から女の子に囲まれてるんだから、私に触られるくらいどうってことないでしょ。