臆病者の逃走劇


(だめだめ、早く起きて出て行ってもらわなきゃ)



首をぶんぶんと振って考えを振り払い、そして彼がもたれて眠っている机をトントンと叩く。



「…東条くん、起きて」

「………」

「戸締りしなくちゃダメなんだけど…」



情けないことに、なんでかわからないけど、声が震えた。

喉がかわく。


緊張、する。


どうやら東条くんは爆睡しているみたいで、机を叩くだけじゃピクともしなかった。

困る。

触るのは、なんだか気がひけるし。

でもこのままじゃ駄目なわけで。



「東条くん…」



もう一度だけトントン、と机を叩いてみて起きないことを確認して、

私は仕方ない、とため息をついた。

…普段から女の子に囲まれてるんだから、私に触られるくらいどうってことないでしょ。


 
< 4 / 28 >

この作品をシェア

pagetop