【短編】私vs国連~大怪獣の足元で~
「こ、国連軍だ~~
 本当に、来た~~」

 色々な国で作られたジープや、戦車に国連軍のマークがあるのが見え。

 私と一緒に話をしていて、逃げ遅れた新聞屋が、情けない声を出した。

 それが合図だったように。

 三人の子供たちをカラダにくっつけて遊んでいた怪獣が、こわごわ慎重に私の近くまで寄って来た。


 ぎゅるるる~~?


 堤防越しの砂浜で、心配そうに喉を鳴らす怪獣に、大丈夫だよ、と声をかけてやると。

 子供たちが全員。

 怪獣がカラダをよせている、堤防の上に次々に滑り下りて来た。

「「「ハカセ~~!」」」

「危ないから、君たちは怪獣の陰に隠れてなさい~~!」

 そう、私が子供たちに叫んだときだった。

 迷彩色ジープの助手席から、軍の隊長らしい男が降りてきて、怪獣を見上げた。

 金髪碧眼。

 ぱりっとした軍服に、偉そうな階級章や勲章を山ほどつけた軍人さんだ。
 
 前にも、怪獣を手放せ、と言う国連の人間にくっついて来た顔見知りだった。

 そいつが、中々流暢な日本語を操り、皮肉っぽく笑った。

「……世界的な平和維持活動の要でアル、国連軍より怪獣のそばの方ガ、安心デスカ?」

「ええ。
 時と場合に寄りますが」

 怪獣の方が安全ですよ、と言った私を、隊長が睨んだ。
 

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