【短編】私vs国連~大怪獣の足元で~

 上目使いで私を見る子供達に、私は、ぱたぱたと手を振った。

「私は怪獣も、君も、怒る気はないよ?
 それより、君たちも朝が早いな。
 学校に行く前に散歩かい?」

 私の質問に、子供達は、みんな、うん、うん、と頷いた。

「だってさぁ。
 今日も朝早くから、ポチに起こされたじゃん?
 だから、学校へ行くまでの時間、ポチに遊んでもらおうと思って……
 ハカセ。いいかな?」

 遊ぶって、いったって、なぁ。

 怪獣のカラダは大きすぎて、そう簡単に遊べないだろうに。

 だけども。

 子供たちの期待を込めた、うるうるな目に催促されて、私は結局ため息をついた。

「……ま、良いんじゃないか?
 怪獣の方も、なんだか遊びたがっているみたいだし」

「「「やったぁ!」」」

「まて!
 良いって言ったからって、そう、すぐ怪獣に飛びつくんじゃないぞ!
 危ないなぁ。
 怪獣は、たぶん。
 お前たちを積極的に食ったり、傷つけたりしないと思うがっ!
 間違って、みんなを踏みつけたら、どうするんだ!!」

「「「だ~い~じょ~ぶ~」」」

 私の心配をよそに。

 子供たちは、怪獣の身を覆っている鱗やら、トゲやら、毛皮やらをかきわけて、てんでんによじ登ってゆく。

 それが、くすぐったいのか、楽しいのか。

 上機嫌の怪獣は、子供たちを落とさない程度に尻尾を振り……

 ……海水の雨を降らせ……

 水滴は、とっくに昇っている真夏の太陽にきらめいて虹を作った。
 

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